プール施工に使われる主要な素材4種
ここでは、国内で主に使われる4つの素材を順番にご紹介します。見た目や施工期間、メンテナンスのしやすさなど、それぞれに特徴があるため、プールを作る目的や置きたい場所に合わせて選ぶことが大切です。
FRP(繊維強化プラスチック)
FRPは、ガラス繊維などを合成樹脂で固めた複合素材です。重量が非常に軽いため、屋上のように地盤強度が限られる場所にも設置しやすいといわれます。さらに水の侵入を受けにくい特性があるので、プール用途に向いている素材として注目されています。
ただし、熱と湿気が多い環境に長期間さらされると、塗装面が傷みやすいという問題が生じる可能性もあります。表面はトップコート(保護塗料)で守られているため、メンテナンスを継続して実施すれば長く使えるのがポイントです。大がかりな工事をせず、工場で作られたユニットを現場で組み合わせる方式が多いことから、施工期間が短いこともFRPの大きな強みだといえるでしょう。
一方で、FRPそのものは紫外線による劣化が起こりやすく、年月がたつとガラス繊維が露出してしまうリスクがあります。こうしたトラブルを防ぐには、5年から7年程度を目安として塗装面を再コーティングし、ひび割れを未然に防いでいく意識が大切です。
コンクリート
コンクリートは伝統的なプール素材として昔から使われており、デザインの自由度が非常に高いのが魅力です。重厚感があり、施工会社の選択肢が多い点も利点といえます。思い通りの形状でオーダーメイドしやすいので、意匠性を重視する商業施設やリゾートなどでよく採用されています。
一方で、コンクリートは防水性に関しては素材自体に頼れず、別途防水塗装やシートで保護する必要があります。施工にも時間と手間がかかり、コンクリート打設後の養生期間や天候の影響も受けやすいです。さらにひび割れが発生した場合、その箇所を特定して補修するのは難しく、大掛かりなメンテナンスが必要になりかねません。長く快適に使うには、定期的な塗り替えと防水層の点検が欠かせないでしょう。
また、コンクリートの重量はかなり大きくなるため、屋上設置は現実的でないことが多いです。もしどうしても高所にプールを置きたい場合、構造の補強や地盤の強度調査などを十分に行う必要があります。
ステンレス
ステンレスは、高い耐震性と防水性が実績として認められている素材です。地震が多い地域では、優れた耐久性としなやかさが評価されており、阪神・淡路大震災や東日本大震災でも大きな被害が少なかった事例があります。塗装仕上げと無塗装仕上げの2パターンがあり、塗装仕上げは見た目を柔軟に変えられますが、定期的な再塗装を行わないと腐食を招く可能性があります。
無塗装仕上げ(たとえばSUS316L)であれば塗装が不要となり、長期間にわたって美観を保ちやすい点が特徴です。ただし、無塗装の場合は独特の金属光沢を生かせる一方で、溶接痕が目立ちやすいという見た目の好みが分かれる面もあります。また、他の金属から“もらい錆”を受けると局部的に腐食する恐れがあるため、定期的な清掃や点検が必要です。
施工費は他の素材より高めになりやすいといわれますが、リサイクル性が高く解体時に金属として再利用できることや、適切な管理を続ければ比較的長く安全に使えるというメリットがあるでしょう。
自立型躯体パネル+強化コンクリート(新素材系)
自立型のパネルに鉄筋コンクリートを組み合わせたハイブリッド工法は、施工を短期間で行える点が大きな魅力です。パネルに断熱層が組み込まれているものもあり、温水プールなどの暖気が逃げにくいメリットがあります。25m級の大規模プールでも工期を圧縮できる可能性が高く、7m×3mサイズであれば10日ほどで施工が完了した例も報告されています。
ただし、対応できる施工業者がまだ少ないことや、こだわってオプションを付けると費用が上がりやすい点には注意が必要です。防水性はライナーで守る仕組みが主流なので、いずれライナーの交換が必要になることを見越しておくと安心です。全体の重量は通常のコンクリート工法より抑えられますが、それでも屋上に設ける場合は建物の補強や詳細な構造検討を行うほうが安全といえます。
施工シーン別おすすめ素材
プールを設置する現場の特徴や利用目的によって、適した素材は異なります。以下では代表的なケースを挙げてみます。
屋上や狭小地に設置する場合
建物や地盤が重い荷重に耐えられない場合は、できるだけプールの自重が軽いほうが良いでしょう。そのため、FRPのようにユニット自体が軽量なものか、パネル+強化コンクリート工法のようにコンクリート使用量を抑えたタイプが候補になります。特にFRPは屋上に設置した実績が多く、軽くて扱いやすいと考えられます。ただし、いずれの素材も屋上で使う際は水の重量が大きいので、構造計算をしっかり行うようにしましょう。
商業施設やリゾートなど高意匠を求める場合
視覚的なインパクトが重要な場所であれば、コンクリートかステンレスを検討すると良いかもしれません。コンクリートは曲線や立体的な形状も再現しやすく、自由度が高いのが最大の魅力です。ステンレスは金属光沢やモダンな雰囲気を出しやすく、ホテルやスパ施設などでスタイリッシュに仕上げたいときに向いています。塗装ステンレスであればカラーバリエーションの自由度も得られますが、定期的な再塗装が発生することは念頭に置きましょう。
住宅向けで早期完成を目指す場合
できるだけ早くプールを使いたい場合、パネル+強化コンクリートやFRPが検討しやすいです。FRPは工場で成形したユニットを運んでくる形式が多いため、現場作業を短縮できます。パネル+強化コンクリート工法は、型枠作りに時間がかからず、断熱材も組み込みやすいため、温水プールにも適していると言われます。いずれも事前の準備をしっかり行い、施工可能な業者を早めに確保するとスムーズに進むでしょう。
施工時に押さえておくべき素材選定のポイント
素材選びでは、下記のような観点を総合的に考えることが大切です。単純に安い・高いだけで判断するのではなく、長期的な使用感やメンテナンス体制を踏まえて検討しましょう。
現場条件(地盤、スペース、搬入経路)のチェック
まずはプールを設置する土地や建物が、プールの重さを支えられるかを確認すると安心です。地盤が弱い場所や、搬入口が狭いケースでは、FRPや小型パネルなど分割しやすい工法が有利になるでしょう。逆にコンクリートを大量に打設しなければならないと、作業車両や重機が入れるかどうかが問題になるかもしれません。
メンテナンスの頻度・ランニングコストの把握
プールのメンテナンスには、塗り替えや清掃、ライナー交換などが含まれます。FRPや塗装ステンレスの場合は数年おきに表面を塗り替える費用が発生しがちです。無塗装のステンレスであれば塗装の手間が省ける半面、定期的な清掃は欠かせません。コンクリートは防水層の状態をチェックしながら、破損があれば部分補修をする必要があります。パネル工法でもライナーに穴が開けば補修が要るでしょう。こうしたランニングコストの違いを含めて長期間で比較すると、実際の負担感が変わります。
耐久性・防水性・断熱性などの優先順位
利用目的や立地によって、どの性能を重視するかが変わります。屋内や温水プールならば断熱性が高い素材が望ましいですし、地震のリスクが高い地域では耐震性を優先したほうがよいでしょう。錆びやすい環境であれば、ステンレスのグレード選定に注意が必要です。屋外で紫外線が強い場所ならば、FRPのトップコート塗り替えを怠らないようにするなど、環境に合わせた対策が必要になります。
デザイン面や予算感をお施主様とすり合わせる
プールは大きな設備投資になるため、デザインの要望と予算をうまくバランスさせることが重要です。特にコンクリートは造形の自由度が高い分、こだわりが強いとコストがかさむ傾向があります。ステンレスは初期費用が高めですが、長く使うほどリサイクル性の高さや塗り替えの少なさが生きてくる場合もあります。パネル工法もオプションを増やせば増やすほど高くなりますし、対応業者が少ないと値段交渉がしにくいケースもあるでしょう。実際に施工経験のある業者から複数の見積もりを取り、イメージと費用との兼ね合いを慎重に見極めることをおすすめします。
まとめ|素材選びがプール成功のカギ
プールを施工するときは、どの素材にも長所と注意点があると理解したうえで、自分が何を最も大切にしたいかを考えることが成功につながりやすいです。たとえば、屋上への設置であればできるだけ軽量な工法を検討するのが定石ですし、商業施設ならメンテナンス性や意匠性を優先すると良いでしょう。住宅向けで早期完成を目指す際は、短工期が得意なFRPやパネルの導入を検討する価値があります。
ただし、初期費用だけを比較して決めると、あとでメンテナンス費が想定より膨らんでしまうこともあります。塗装やライナー交換のサイクル、素材そのものの耐久年数を含め、長期的な視野で計画を立てると安心です。専門業者の意見を取り入れながら、建物の構造補強やライフサイクルコストまで見据えたうえで素材を選べば、長い年月にわたって楽しく快適なプールライフを送ることができるでしょう。
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