プール設計の基本|まず押さえるべきポイントは?
家や施設にプールを新設するときは、「安全管理」「衛生管理」「構造上の安定性」に加え、周辺の使い勝手やメンテナンス性を意識することが重要です。ここでは、吸込み事故を防ぐ排水口の二重構造や、ろ過装置・滅菌装置を導入して事故や汚染のリスクを低減する方法について取り上げます。
安全面のポイント
排水口には、蓋と吸込み防止金具を併用してネジやボルトで頑丈に固定することが望ましいとされています。この仕組みによって手足の巻き込みを防ぎ、毎秒0.1~0.5メートルほどの吸込流速に抑えると、プールサイドの仕上げと合わせて事故を未然に防ぐ設計を実現しやすくなります。
水質管理には、常時稼働するろ過装置や定期的な点検が必須です。規模が小さくても残留塩素を適正値に保ち、防滑性のある床材や2パーセント前後の排水勾配を組み合わせることで、転倒リスクを軽減できます。
プールの種類と構造
公的な指針で取り上げられているプール構造には、コンクリート製、鋼製、アルミ製、ステンレス製、FRP製などがあります。コンクリート製は古くから採用され、設計の自由度が高い一方で、施工期間やコストが大きくなる傾向が見られます。鋼製やアルミ製は比較的軽量ですが、腐食対策や溶接技術への配慮が不可欠です。
ステンレス製は耐久性と耐食性に優れ、保守点検もしやすい反面、異種金属部分の電食防止対策が求められます。FRP製は工期を短縮しやすい反面、継ぎ目のライニングを正しく行わないと水漏れや劣化が進みやすいため、注意が必要といえるでしょう。いずれの構造を選んでも、排水口と吸込み口は二重構造にし、メンテナンスしやすく設計することが肝要とされています。
屋外・屋内プールの違い
屋内プールは空調管理や湿度管理が不可欠になり、結露やカビを抑える換気システムも視野に入れる必要があります。競技用の室内プールでは、水面から1メートル上を600ルクス以上に保つなどの照度基準や残響時間の規定があるため、ダクトや配管のレイアウトを含めて建物全体で検討するとよいでしょう。
屋外プールの場合は、気温変化や落ち葉・砂などの影響を受けやすいほか、夜間の照明設備や近隣への光や騒音への配慮も検討課題となります。住宅規模であっても、屋内外の違いによってメンテナンスや施工費が変わる点に注意しましょう。
使用目的による設計の違い(家族用・運動用など)
プールをどのように使うかによって、水深や設備の配置は変わります。競技や運動に使う予定なら水深2メートル以上を推奨するケースが多く、水球や飛込競技では3メートル近い深さが適当になる場合があります。スタート台や飛込台を設置するなら、水深や壁の高さを合わせて検討することが欠かせません。
家族やレジャー向けのプールなら、水深を1メートル程度に抑え、吸込み防止の金具を設置しながら日常の点検をしやすくする形が多く採用されています。規模の大小にかかわらず、排水口や吸込み口の二重構造はすべてのプールで考慮すべき要素です。また、ろ過設備や塩素による衛生管理は、維持費にも直結するため計画段階から検討しておきましょう。
家庭用プールの設計基準
家庭向けのプールは競技用や公共施設向けの基準と合致しない部分があるものの、安全や衛生を守るうえで公的な指針で示される考え方を取り入れる意義は小さくありません。人の手足を巻き込む事故や、水の汚染による健康被害は決して小さなリスクではないため、必要な設備や点検体制を設計段階でしっかり見据えておくことが、快適なプールライフへの第一歩になるでしょう。
適用される法規制と基準
家庭用のプールは公的施設として扱われないケースが多いものの、電気設備や衛生上の規定、建築基準法で定められた構造要件などが絡む可能性があります。大きく改築する場合や屋内にプールを造る場合は、役所への確認申請や追加工事が必要になることがあります。
ろ過装置や配管を設備として導入するなら、排水経路や衛生状態に影響を与えないよう、公的なガイドラインを参考にしながらトラブルを防ぐことが推奨されます。
サイズ・深さの目安と注意点
子ども主体で遊ぶプールは、水深を1メートル前後に抑えると清掃やメンテナンスが楽になるというメリットがあります。運動や簡易的な水泳を行うなら、1.2メートル以上の深さにしておけば水中での動きに余裕が生まれます。
さらに、プールサイドを広めに確保すると、着替えや準備体操がしやすくなります。深く造るほど水圧による漏水リスクが増すため、施工技術や材料の耐久性を慎重に選んでおきたいところです。
水質・衛生に関する基準
家庭用プールでも、ろ過装置や循環ポンプを使って常に水を動かしながら、適切な薬剤を投入し、水質検査を行うスタイルが効果的とされています。オーバーフロー方式を導入すると表層のゴミや唾液などの排出がスムーズになり、水質も安定しやすくなります。
ただ、小型プールだとしても一定の利用頻度で全換水を行わなければならない場合があり、その際の排水先や給水経路に住宅設備との整合性を持たせる必要があります。
安全面に関する基準(転倒・感電・落水防止など)
プールサイドの床は水に濡れる状態が日常的に想定されるため、防滑性のある仕上げや2パーセントほどの勾配を設けて転倒リスクを抑える設計が推奨されています。電気設備は防水コンセントに加え、漏電遮断器も組み合わせて感電を予防することが望ましいでしょう。
また、落水防止用のフェンスやカバーを備えるほか、排水口や吸込み口の構造を二重にして蓋をネジ留めするなど、あらゆる規模のプールで基本的な安全策を欠かさないことが大切です。子どもやペットが近づく機会が多いなら、水面下のスペースや深さに死角ができないよう工夫したり、監視カメラを導入したりする手段も考えられます。
理想のプールで、家族の笑顔を増やそう
家庭用プールを設置する際は、排水口の二重構造や滑りにくい床などの安全策に加え、ろ過装置を含む水質管理の仕組みを十分に検討することがポイントとなります。利用目的に合わせて深さや素材を選べば、清掃の負担が少ない快適な空間づくりに近づくでしょう。公的な基準を参考にしながら計画を練り、定期的な点検を実施することで、家族みんながいつでも楽しめる理想のプールを叶えましょう。
情報参照元
- 建築工事標準仕様書(https://www.mext.go.jp/content/1367971_3.pdf)
- 公認プール施設要領(https://swim.or.jp/assets/files/pdf/pages/about/rule/r_pool20230401.pdf)
- 屋内プール建築設計指針(https://www.mod.go.jp/j/budget/documents/gijutsu_kijun/no1/1-14.pdf)
- プールの安全標準指針(https://www.mlit.go.jp/kisha/kisha07/04/040929/04.pdf)
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